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ジャニーズ事務所の社名変更問題について、他企業を例に考えたい。
変更派の主な主張は、加害者である前社長・ジャニー喜多川氏の名前が冠されている道義的な問題だ。また、単純にイメージを払拭した方が良いと、経営戦略の視点からも叫ばれている。
実際、過去に巨大な不祥事を起こした組織はどうだったのか。
ジャニーズとの比較でよく引き合いに出される雪印は、2000年に被害者1万人超の食中毒事件を起こし、翌年には食肉偽装も判明。廃業すらあり得ると見られたが、結局社名は残り、その後の経営改革でブランド力は回復。2009年には雪印メグミルク株式会社となったが、これは合併に伴う改称である。
世間の「名前さえ変えればOK」も安易な発想
一方、1980年代に薬害エイズ事件を起こしたミドリ十字は、複雑に名称を変更している。同社は約1400人のHIV感染に多くの死亡者も生み、元社長らは業務上過失致死罪で刑事告訴されたほか、国会の参考人招致も受け、国内最大規模の薬害訴訟となった。
その後は1998年に吉富製薬と合併し、2000年にウェルファイド株式会社と改称。2001年に三菱東京製薬と合併して三菱ウェルファーマとなり、2007年に田辺製薬と合併したことから、現在の田辺三菱製薬になっている。
他方、1958年から販売した睡眠薬・イソミン錠で1000件越える死産や奇形児が相次ぐ薬害事件を起こした大日本製薬は、2005年に住友製薬と合併するまで社名が存続。この間、事件の原因となった成分・サリドマイドの安全な実用化に成功し、2009年には難病である多発性骨髄腫への効果も認められている。
「いずれの例からも、不祥事を受けて即社名変更というケースは珍しいことが分かる。変更されても合併に伴う改称ですし、ジャニーズ事務所の判断も特段奇異とは言えないでしょう。
そもそも、社名を変えると責任逃れの印象になる面があり、何度も改称したミドリ十字は、消費者も過去の不祥事が分かりづらくなっている。一方、大日本製薬は、サリドマイドの安全な実用化まで漕ぎ着け、社名を残し続けることで原罪と向き合ったとも言えるでしょう」(経済アナリスト)
変えると「逃げ」だと言われ、そのままだと「無反省」と言われる。今後事務所の判断はどちらに転ぶのだろうか。
Source: まいじつ2
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